お前の故郷は何処かと尋ねられれば、それは門司である。
門司は福岡県北部、九州の天辺にある。
関門海峡を挟み対岸に山口県下関市を望む。
父の仕事の関係で3歳から移り住み、進学のために上京する18歳まで住んでいた。
途中一度、父の転勤で鹿児島に2年ほど住んだことがあるが、自分の背骨を造ったのはやはりこの街だ。
当時の門司の印象と言えば薄汚い街であった。
ごちゃごちゃと古い建物や民家が無秩序に立ち並び、当時からさびれていた商店街に活気のない港。
とてもじゃないがお洒落な街とは一万光年くらい離れていた。
とにかく、辛気臭い街であった。
現在は同じ福岡だが門司から車で1時間ほどの町に住んでいる。
両親も亡くなり当時の家も処分したので、めったに門司に行くことも無くなってしまった。
今年、高校時代の同窓会をやることになり幹事を仰せつかった。
先日、打ち合わせで久しぶりに門司にやってきた。多分5~6年ぶりだろうか。
久しぶりなので門司港駅のあたりをぶらぶらしてみた。
こちらは門司港駅。大正13年に建てられたルネッサンス様式の木造駅舎で2019年に復元工事を終えリニューアルオープンした。
リニューアルされた門司港駅を観るのは初めてだ。
昔は駅舎が今にも崩れ落ちそうで門司のホーンテッドマンションなんて呼ばれていた。
何度も取り壊して新しい駅舎に建て替える計画が有ったらしいが、門司の顔としてこれからも地元民に親しまれてほしい。
門司港駅の周辺も整備されて小ぎれいになっている。
驚いたことに観光客がいるのである。
それもアジア系のおそらく中国、台湾、韓国の方々であろうがまさか門司の街に観光客、それも外国人の観光客が訪れるようになるとは。隔世の感とはまさにこの事であろう。
もう一つ驚いたことがある。
カレー臭いのである。
至るところからカレーの匂いがする。
最近、何でもこの門司港エリアは焼カレーというものを名物として推しているんだそうだ。
この地区にあるほとんどの飲食店、喫茶店で焼カレーの看板や幟がたっている。
焼カレーで観光振興を図っているのであろうが、現在でも門司に住んでいる友人に聞いてみても、平成のいつ頃からか始まったが、食ったことも無いので良く分からんとの事。
私も門司には長年住んでいたが、こんなものは食ったことも見たことも無い。
しかしまあ、折角なので食って行くことにした。
食べログで調べてみると、伽哩本舗という店が発祥だとか。
行ってみるとなんと行列が。
取り敢えず並んでみたが聞こえてくるのは韓国語や中国語。
福岡でも博多なら分からんでもないが、こんなさびれた港町にカレーを食べるために並ぶ外国人観光客がいるなんて。
SNS恐るべし。
並んでまで食べる気はないのでぷらぷら歩きながら別の店を探してみることにした。
海風が冷たいが天気が良いので気持ちがいい。
「じーも」君。門司港のマスコットキャラクター
この海を見て育った。
どんよりとした鈍色の海は当時のままだ。
だから石垣島の海を見た時はたまげた。
たまにテレビのバラエティー番組などで見ていたが、どうせ加工された色だろうと思っていた。
驚天動地であった。
逆に沖縄の方がこの海の色を観たらあまりの汚さに驚くのではないか。
しかしこの鈍色の海を見て関門海峡をせわしなく行きかう船を見ていると心が落ち着く。
これが私にとっての故郷の光景なのであろう。
線路を超えてぷらぷらと歩いてみる。
「ミツバチカレー」なるお店があった。
並ばずに入れそうなのでここで「焼カレー」を食べていくことにした。
ハヤシライスやキーマカレーも美味しそうなんだが、ここはやはり一押しのスパイシー焼カレーをいただくことにする。
炭酸水の中にライムやらオレンジやらリンゴやら入っているのだがこれが無茶苦茶美味い。
これだけで別にお金取れるのではないか。
こちらがスパイシー焼カレー。
あまり辛くはなく食べやすかった。
ご飯の上に生卵とチーズにパン粉がかかっておりカリッと焼き上げられている。
たっぷりのチーズが嬉しいね。
たまごを割ると黄身がとろーりと流れ出る。
レシピに特に決まりはないそうだが半熟卵にとろけるチーズが定番らしい。
食べながら思い出したのだが、昔喫茶店でカレードリアなるものが提供されていた。
ご飯の上にカレーと卵とチーズを乗っけて焼き上げたものでそれは割と食べていたような気がする。
それの進化系だろうか。
美味しく完食。
「焼カレー」これはこれでアリなんではなかろうか。
こちらも久しぶりの栄町銀天街へ。
日本全国どこにでもある、さびれた商店街である。
当時からさびれていた。
さびれ具合も変わらない。いい感じに昭和の趣を残している。
ある意味凄いことではないのか。
一周廻って時代が追いついたか。
「リバー」まだやってたのか!
久しぶりに門司の街を歩いてみたが楽しかった。
全く変わってしまったものもあり、時代に取り残されたまま変わらなかったものもあり。
この街を何とか活気づけようと地元の人たちは頑張っているのであろう。
また「焼カレー」食べに来ます。
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