北海道物産展で美味しいものを食べまくっているんだが、もう一つ食べたいものがある。
スープカレーである。
沖縄でスープカレーと言えばAJITOYAさんであろう。
泉崎から近いところでは県議会棟の中に店舗が入っていたはずだ。
調べてみると11時開店とあるので、それに合わせて行ってみる。
入店してみると残念な事にこのお店はスパイスカレーしか置いてないそうである。
農連プラザ店もスパイスカレーだけ、スープカレーを置いているのは首里店と泡瀬店だけらしい。
AJITOYAさんといえばスープカレーだったんだけど、やはり沖縄ではスープカレーはあまりはやらなかったのだろうか。
那覇は今スパイスカレーの激戦地になっているから、そちらに方向転換したのかな。
しかし今更、首里まで行く気にはなれないし、どこか近くにスープカレー食べられるお店はないかと食べログで探してみると、なんとお菓子御殿国際通り店の2階にレストランがあってそこで食べられるらしい。
ここでお土産を買ったこともあったが2階にレストランがあるなんて全く知らなかった。
奥に2階に続く階段がある。
上がると、そこは何とも不思議な世界であった。
沖縄の家屋を模したであろう室内の、薄暗い照明の中に著名な作家が作ったやちむんの作品が並んでいる。
そのあまりに無機質なたたずまいは私に何かを連想させた。
それはこの時は分からなかったのだが。
なんかレストランっていう感じじゃないね。
博物館の展示室にいるみたい。
整然と並ぶシーサーたち。
うん!? 今、何か動かなかったか?
なんか落ち着かない空間である。
注文するのはもちろんスープカレー。
「じっくり煮込んだ自家製の味付け軟骨ソーキ。下味もしっかり!!スープカレーとの相性もGOOD」
これは期待できそう。
最近はどこでも人手不足だからこんなロボットが活躍しているようだ。
ロボット見てみたい。
「ネコ型ロボットがお料理を運ぶ時があります」
ありますということは人が運んでくることもあるのだろう。
ネコはネコでも先ほど注文を取りに来てくれたドラえもん体形のおばちゃんが運んできたりしてね。
おわぁ、なんか来た!
これがネコ型配膳ロボットか。
さあ受け取れという有無を言わせぬ態度。
このクールに去っていく後姿を眺めていると先ほど私が感じた違和感の正体が分かった。
ここは映画「ブレードランナー」を思い出させてしまうのである。
にぎやかで無国籍で猥雑な国際通りから一歩中に入った無機質で暗鬱でざらりとした空間。
「ブレードランナー」のオープニングに出てきた街の通りは日本だとか東南アジアをイメージしたものだとか色々言われていたが、私は当初からこれは沖縄ではないかと思っていた。
生々しい人間ときれいで画一化された人工物の対比。
普通レストランとは人々が楽しく会話をしながら食事をする場所だが、ここにはそんな雰囲気はない。
食事とは栄養を補給するだけのものであるかのような未来の社会に紛れ込んだようだ。
この店舗のデザイナーは間違いなく「ブレードランナー」の影響を受けている。(多分)
お菓子御殿特製沖縄を感じるスープカレー
ご存じない方のために映画「ブレードランナー」を解説する。
1982年公開のハリウッド映画である。
監督は巨匠リドリー・スコット、主演ハリソン・フォード、その他ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング等。
原作はサイバー・パンクの名作、フィリップ・K・ディックのSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」
21世紀初頭、人類は遺伝子技術工学の発達によりロボットに代わるレプリカントと呼ばれる人造人間を発明した。
彼らは優れた体力に、創造した科学者と同じような知力、知性も持っていた。見た目は人間と全く区別がつかない。
彼らは人間に代わり宇宙開拓の最前線で過酷な奴隷労働や戦闘に従事させられていた。
彼らは製造から数年たつと感情や自我が芽生える。
自分たちはいったい何者なのか、何のために生まれ、何故こんな所で過酷な労働に従事しているのか。
そして彼らは主人たる人類に反旗を翻すようになる。
そのため安全装置として寿命は4年と決められていたが脱走して人間社会に紛れ込もうとするレプリカントが後を絶たず、それを処理するのが警察の専任捜査官「ブレードランナー」である。
彼らは自分たちの寿命がいつまでなのか知らない。その答えを知るために自分たちの創造主の元を訪れ、寿命を延ばしてもらおうと計画する。
ハリソン・フォード扮するブレードランナーのデッカード。ルトガー・ハウアー演ずる戦闘用レプリカントのリーダー、バッティ。
レプリカントを追うデッカードとの間で、話が展開するわけである。
ソーキがいい感じ。
でもって、なんやかんや色々あって、レプリカント達は自分たちの寿命が伸ばせないのを知る。
そして絶望のあまり彼らの創造主である科学者を殺してしまう。
デッカードとの最後の戦いの最中、自分の寿命が尽きたことを知ったバッティはその瞳の中に喜びとも悲しみとも安堵ともつかぬ眼差しを空に向け死んでいく。
人間は何処からきて何処に行くのか。
自分は何のために生まれ、誰のために生き、そして死んでいくのか。
これは人間に与えられた永遠の命題であろう。
「ブレードランナー」私はこれまで数々映画を見てきたがこれほど悲しくて美しい映画を見たことがない。
是非一度、皆さんにも見ていただきたい名作である。
なんかこの店の雰囲気は、劇中のレプリカントを作ったタイレル社のオフィスを思わせるのである。
このシーサーたちも実は電気仕掛けで、店が閉まり、人がいなくなった深夜に動き出すんだろうな。
店内で紅イモタルトが作られているようだが騙されてはいけない。
深夜ここでは電気シーサーやレプリカントがパッコン、パッコンと作られているのである。
店を出た後、思わずお菓子御殿を振り返った。
それはもうお菓子御殿ではなく私にはレプリカントの製造工場にしか見えないのであった。
国際通りのど真ん中にこんな場所があったなんて。
沖縄恐るべし。
追記
私の好きな洋画ベスト3は
1位 「ブレードランナー」
2位 「グランブルー」
3位 「ゴットファザーPart1」です。
それとカレーは普通に美味しかったです。
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2023.09.21
沖縄メシ
リウボウで北海道物産展その3
ススキノ狸小路の居酒屋で。