
私は沖縄に滞在するときは、泉崎に宿をとりますので、ホテルから国際通り方面に向かうときは那覇市役所
の前を通ります。

庁舎の前に銅像が建っておりまして、全裸の男性の銅像です。

私は常々、駅前なんぞによくこういった、ブロンズ像が展示されておりますが、誰が何の目的をもって設置
しているんでしょうか、疑問に思っておりました。
裸婦(女性像)の像なら、女性本来の美というかエロチシズムに芸術性を感じることが出来ますが、このお
っさんの像にどんな芸術性を感じろと言うのか。

私はひそかに「ご陽気にポーズをとる、変態のおっさん像」と呼んでおりました。

ある日、何時ものように前を通りかかりますと、銘板らしきものがあるのを見つけました。
「生誕」という題が付いておりました。
このブロンズ像なんと、朝倉文夫の作だったのです。
朝倉文夫といえば日本近代彫刻を代表する芸術家です。
まさか沖縄で朝倉文夫の作品がみられるとは。
皆さんも一度は美術の教科書で見たことがあると思います。
代表作は「墓守」。早稲田の大隈重信の像なんかも有名ですよね。
この像のいわれが書いてありました。
「終戦直後の混乱と廃墟の中から力強く立ち上がる
たくましい青年の意気を示す等身大の男性裸像」
当時の首都圏整備委員会企画室長 黒田俊雄 氏が、日本彫刻界の第一人者である朝倉文夫氏に「廃墟より
たちあがりつつある首都 那覇市の人々を激励しつつ本土との心の通いになるような彫刻を送っていただけ
ないでしょうか」とお願いしたところ朝倉氏は「自分が昭和21年の敗戦のぜつぼうのなかでつくった{生
誕}という作品を贈ろう。」快く承諾された。
それにより、この作品がここ那覇市役所に本庁舎に設置させた。
とあります。
この像は戦後の廃墟から復興しつつあった沖縄県民を励まそうと贈られたものだったのです。

朝倉文夫の代表作 「墓守」
なんかこんな感じ。
東京都台東区にあります、朝倉彫塑館で実物を見たことが有りますが、なんともいえぬ優しい表情と額に刻
まれた皺が「墓守」の老人の辿った人生を物語っているようでしばし見入ったものです。
朝倉彫塑館公式ホームページ

この像の原型も朝倉彫塑館に展示されているようです。
雨の日も風の日も暑い日も寒い日もここに立ち続けて沖縄県民を励ましてきた。
そう思うとこの全裸のおっさんの像もありがたく思えてきます。思わず手を合わせました。
これからも沖縄県民の皆さんを温かく見守り続けてください。
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